プロローグ

ずっと遠くのお話です。
そこに昔あった文明の持ち主だったいきものは、もはやいなくなっていました。
だれも使わなくなった工場跡地や、廃墟となったビルもほとんどが水没し、
そのほかのたくさんのいきものも、ほとんどいなくなってしまっていました。

その星には何世代にもわたり、小さないきものであるunaたちが生活していました。
unaの住む場所も、だんだんと水没していきました。
そこで、unaたちはちがう星へ旅立つために、ロケットを作ることにしました。
できるだけたくさんのunaが乗れる、大きなロケットです。
誰ともなくunaたちは、残った少しの乾いた場所に先人達の残したロケットの部品を
集めだしました。
それは、水没した工場群の中に点在していました。

unaたちは、水浸しの工場から一個ずつロケットの部品をもってきました。
それはたいへんな量があったため、そうそう運びきれるものではありません。
それでもunaたちは別に不平不満があるわけでもなく、毎日毎日、
ロケットの部品を移動させつづけました。
雨が降っても、風が強くて吹き飛ばされても、毎日毎日運びつづけます。
それは永遠に続くのでないかと思われました。

ずいぶんと年月がたったある日。
ついにunaたちは、部品をロケットの形に積み上げました。
あまりに永いあいだをかけて移動させてきたために、
乾いていたその場所も水がたまり、足元が不安定になっていたぐらいです。

unaたちはバンザイ、バンザイと声をあげつつ、そのロケットの中に
乗り込んでいきました。
みんなで一生懸命に作ったロケットでしたが、結局は50ぴきくらいしか
乗ることができませんでした。
乗れなかった他の多くのunaは、ロケットのまわりでそれが飛び立つことの期待に
胸をふくらませ、見上げていました。
乗り込んだunaたちも、はりきっていろんなボタンを押してみたりしました。
でも、ロケットはうんともすんともいいません。

そうです。ロケットの部品をただ積み上げただけでは動くわけがありません。
ただ、ロケットの足元のぬかるんだ地面だけがぶくぶくと泡をたてはじめました。
それに気づいた1ぴきのunaは、他のunaに知らせました。
他のunaたちも不思議がってそれをみつめています。
そこで良くないことがおこりました。
ぬかるんだ地面が、ロケットの重さにたえられなくなり、
ロケットがぐらぐらと傾きだしました。
unaたちは、びっくりしてそれを見上げました。
ドドーン。と、大きな音をたててついにロケットは倒れました。

そこには、unaたちがちょうど集まっていたのでつぶされてしまいました。
ロケットの中にいたunaたちも死んでしまいました。
たまたま、下敷きにならなかったunaたちはしばらくは音にびっくりしていました。

やがて、unaたちはロケットの部品を別の乾いた場所に移動させはじめました。
またロケットを積み上げるつもりです。
近くには乾いた場所がもうなかったので、遠くまでそれを運びました。
また何年もの時間が過ぎました。
遠くまで運ばなければならなかったので、また長い長い時間がかかりました。

どのくらい時間がながれたのでしょうか?

ついにある夜、unaたちは、ロケットの形に積み上げました。
unaたちは歓声を上げました。そして、さっそうとロケットに乗り込んでいきます。
中に入ったunaたちは、かたっぱしからスイッチを起こしたりしてみました。
すると、外にライトがつきました。外のunaたちは、大喜びです。
ラッパを吹いて大騒ぎしました。
でも、ロケットはライトが一つついたり消えたりするだけで
一向に飛び立とうとはしません。
まわりのunaたちも騒いではいましたがやがて疲れてロケットのまわりで、
眠ってしまいました。
毎日毎日、ロケットが飛び立つのものとunaたちは期待していましたが、
なかなかそうはなりません。
唯一ついていたライトもやがて消えてしまいました。

その日はとても風が強い日でした。
unaたちはそれを避けるために、ロケットの足元に固まっていました。
ロケット自体は強い風にもびくともしません。
しかし、unaたちはロケットの一番上の部分に違う部品をのせてしまっていたので、
平たくて大きいその部分は風でぐらぐら動き、そのまわりの部分ごと地面へと
落下してしまいました。
ついていないことに、そこには多くのunaたちが固まっていた場所なので、
また多くのunaがつぶされました。
ロケットの中にいたunaたちはびっくりしてそれを見ていましたが、
すぐに、ロケットを崩しはじめました。
ロケットが発射できるように、もう一度くみなおすつもりなのです。
それにも、またとんでもない時間がかかりました。

一度崩してしまうのに何年も、また積み上げるのに何年もかかりました。
そして出来るたびにunaたちは大喜びをして乗り込み、
うまくいかずに作り直しをしました。
とほうもない時間がたち、そのあいだ長い長い雨が降ったために、
乾いた場所もほとんど無くなってしまいました。
どのくらい時間がたったのか、もうわかりません。

unaたちはまたロケットを積み上げました。
いつもと同じように、unaたちは歓声を上げ、大喜びでロケットに乗り込みました。
水浸しになったまわりの地面では、unaたちがロケットを見上げています。
(もう、ロケットのそばには近よりません)
乗り込んだunaの1ぴきが、はりきってスイッチを押しました。
すると、ロケット全体がブーンという音をたてました。
次のunaが別のスイッチを押します。
するとエンジンが動きだしました。
その次のunaがレバーをひっぱりました。
それは大爆音をあげてロケットのまわりに煙がたちこめました。
次のunaが赤いスイッチを押したとき、遂にロケットは空へと向かいました。
下にいたunaたちは煙の中で大歓声をあげました。
それがどこに向かって飛んでいったのかは誰にもわかりませんでした。
残ったunaたちは、ただ、ただ、大喜びしながらロケットの消えた空に
歓声をあげていました。