ロケットの行方

ドドドーンとそらに消えたロケット。
かたかたと震えるその中で、unaたちの宴会がはじまりました。
(宴会とはいっても、食べるものも飲むものもないんですけどね)
あるunaは得意になって太鼓をたたき、
あるunaは足をばたばたさせながら踊り、
あるunaはずぅっとくすくす笑っていました。
みんな嬉しくなってしまったのです。
ときおりゆれるロケットの振動も、期待と興奮の中で
打ち消されてしまっているようでした。

ただ、1ぴきのunaだけはどうやら様子が違っていました。
みんなと同じように騒いではいますが、うたを歌っているのです。

unaは音がすきなので、歌ったり、太鼓をたたいたりを好んで行います。
うたを歌うことなど、ちっともめずらしくありません。
そのunaはほかのunaたちとどこが違うというのでしょうか。
そのunaはうたを歌いつづけることをやめないのです。

他のunaたちは、さんざん騒ぐと、つかれてねむってしまうのですが、
このunaだけは、休むことなくずっと歌っているのです。
全くもっておかしな事です。

もしかすると、のっているロケットの実情と関係があるのかもしれません。
まず、このロケットには食べるものが積んでありません。飲むものもありません。
あるのは、太鼓や布切れ、あまり役にたちそうにない釣りの道具や、
中身のはいっていない小さなツボなどなど。
そして進路の設定がなされていないロケットの軌道。
そう多くはない燃料。
つまり、このロケットはこのままではどこにも着かない、というのが現実でした。

のっているunaたちはこの事に気がついていません。
騒ぎ、ねむり、おきてはまた騒いでいます。
あるunaなどは、すっかり興奮してしまい、なんども座席から
すべり落ちては笑い転げました。
ロケットの通路や壁は、ライトが内臓されていたため、室内全体が明るく
unaたちはなんとも幸せな気持ちにつつまれているのでした。
どん、どん、という太鼓の音が響くロケットの中は、
静かな宇宙のなかのちっちゃな大騒ぎです。

歌いつづけているunaは、声がかすれてきました。
このunaはこう考えているのでした。
(うたを歌うのをやめると死んでしまう)
どこでどう勘違いをしてこう考えたのでしょうか。
むしろ、歌うのをやめないと死んでしまうように見えます。

ねむっていた他のunaがまた目を覚まし、なにも見えない窓のそとを
うれしそうに眺めているときも、
かすかな声をふりしぼって歌っていました。

ロケットはそんなunaたちをのせて、ただただ進みつづけます。

ところで、地上に残ったunaたちは、どうしているのでしょう。
ばんざーい、ばんざーいと飽きることなくそらを見上げていたunaたちですが、
希望のロケットは飛んでいってしまいました。
食べ物と飲み物は少しだけありました。それをみんなで分けて食べました。
夜になると、ロケットのあったくぼみにみんなで入って眠りました。
朝になるとまたみんなでそらを見上げました。
そのうち1ぴきがばんざーい、ばんざーいとまたはじめました。
そのうち面白がってほかのunaもばんざーいとはじめるのでした。
そうなればロケットにのったunaたちだって負けてはいられません。ね。

小さないきものを飼ったことがある人にはわかるかもしれませんが、
小さないきものというのは、弱っているところをなかなか見せないものです。
なぜなら、小さないきものは弱ったところをみせるとすぐに
他のいきものにやられてしまうからです。
弱っていてもぎりぎりまで虚勢をはっていくのです。
unaたちもそうでした。

さて、ふたたびロケットの中。
ほとんどのunaたちは、ただ楽しそうに過ごしています。
たまに、ごくたまに太鼓を叩く音がどん、となります。

では、うたを歌いつづけていたあのunaはどうしているのでしょう。
なんと席を立ち上がって歌いながら歩いています。
ふらふらしています。
もう声もほとんど出ていません。

つまりこういうことです。
もう声があんまりでないから、音がしないところで歌わないといけない、
と思ったのです。
座席の横を通りぬけ、いちばん前までいくと、かなり危なっかしい足取りで
ハシゴをのぼっていきました。
このハシゴは最初に乗り込んだ時のハシゴでした。

なんとか、ひとつ上の部屋にのぼりました。
まだまだ下の音が聞こえるので、ハシゴをのぼってさらに上へ行こうとしましたが、
もうそのちからは残っていませんでした。

unaは、すこしでもおおきな声をだそうとしながら、その部屋にあった
白い台の上にのぼりました。
でも、ちからが入らないので、転んでしまいました。
転がりながらも、なんとかうたはやめませんでした。

その時、ぴぴぴぴぴ、という電子音がなりました。
どうやら、転んだ拍子になにかにぶつかってしまったのです。

unaは、鳥が歌っているのだと思いました。
それを聞いたunaはついに歌うのをやめました。
もう自分が歌わなくても、鳥が歌っているから大丈夫だと思ったのでした。
そして、そのunaは目を閉じ、二度とあけることはありませんでした。

それは、ロケットの進路をオートマチックに変更するスイッチでした。
ロケットは急激に向きを変えていきました。

結果的には、あのunaが考えていたことがあたっていたのかもしれません。
歌うのをやめてしまっていたら、どこにも着かないロケットのなかで
みんな死んでしまっていたのですから。
もちろんそのunaも、そんなことを考えていたのではないのでしょう。
でも、unaらしいというのは、こういうことなのかもしれません。

その先には星がみえていました。
青いきれいな星でした。
それをみつけた下の階のunaは、どん、と小さく太鼓を打ったのでした。