unaたちは、その道を歩いていくと目の前にとても水の澄んだ小さな湖がありました。
馬車と雪男もunaたちの後を歩いてついてきています。
hunaが湖の水で手を洗おうとすると、ふいに妖精のような巻き髪をした女の子が、
湖のうえを歩いていくのがみえました。
まるで体の重さがないみたいに、ふわりふわりと、目をつぶったまま歩いていきます。
「あの子よ!」とhunaは空中をあるく巻髪の女の子を追いかけました。
unaも香水師も馬車も雪男も必死に追いかけます。
くるくるとした巻き髪が光をあびて、空を浮かぶ様はまるで天使のようです。
「待って!」とhunaが叫ぶと巻髪の女の子は、空中で振り返りました。
「なぁに?」と巻髪の女の子はいいます。ずいぶんと子供っぽいしゃべり方です。
「ええと、あなたのお名前は?」とhunaが聞きました。
「cuna(きゅーな)」とだけ答えると、また飛んでいこうとしました。
「ちょっと、待ってよ!」とhunaが叫びます。
「なぞなぞか?」とcunaがいいました。
「なぞなぞ?」とhunaは素頓狂な声をあげました。
「なぞなぞないなら、もういく」とcunaは空に飛んでいきました。
それをみてhunaは慌てました。
(そうだ、なぞなぞの本で育てたといっていた)と思い出したのです。
このコが幻覚の効かない娘に違いありません。
「あー!まって!まって!なぞなぞ思いついた!」とhunaはいいました。
「だい じょうぶ か」とunaが聞きます。
「ええと、警察官と刑事がどちらが大きなものを
持ち上げられるか競争しました。どっちが勝ったでしょう?」
と空にいいました。
すると、cunaがにこにこしながら空から降りてきました。
ふわりとhunaの前に降り立つと「それ新しいなぞなぞか?」
とにこにこして聞いています。
「けいさつとけいじ、けいさつとけいじ」とcunaは
嬉しそうにまわりをぐるぐると歩き始めました。
「警察官と刑事か」と香水師もなんとなく真剣に考えます。
cunaはしばらく考えていましたが、困った顔をしました。
そして「答えは?なあに?」とcunaが泣きそうな顔をしてせがんできます。
するとhunaは「答えは、私たちと一緒に旅をしてくれたら、教えます。」といいました。
「けち!」とcunaはいいました。
「ずるい、答え教えないのに!けちんぼ!」
とくるくるパーマをかき乱して怒っています。
「だったら答え教えない」とhunaは歩き出そうとしました。
その様子をみていたunaも「こたえ おしえて」といいはじめました。
さっきまでとは立場が逆で、今度はcunaがhunaを追いかけます。
「まって!まって!」といいながら空を飛んできます。
「答えは一緒にいくコにだけ教えるわ。」とhunaはいいました。
「一緒にいくから答え教えて」とcunaはふてくされていいました。
「いいわ。」とhunaはいいました。
cunaもunaも香水師も答えを聞き逃さないように耳をそばだてます。
しかしhunaはモジモジして、なかなか答えをいいません。
unaが「といれ か?」と聞くと「ちがう」といいます。
こほん、とhunaが咳払いをしました。
「あらかじめ、お断りしておきますがこのなぞなぞは、
とっさに思いついたもので、、、
別に普段こんな事ばかり考えている訳ではありません。」
「答えは?」とcunaがせかします。
hunaは顔を赤らめて、うつむきながら「刑事(デカ)勝った」といいました。
「だじゃれ か…」と香水師が冷ややかな目でみました。
unaも目を細めてhunaをみました。
しかしcunaだけはこのなぞなぞが気に入ったのか、尊敬のまなざしでみています。
「でかかった!でかかった!」と大はしゃぎします。
それによりhunaはますます顔を赤くしました。
そして「あーおもしろかった」といいながら飛んでいこうとしました。
「ちょっと!」とhunaが怒りました。
「答え教えたでしょう!一緒についてきてよ!」とhunaは烈火のごとく怒りました。
「え〜」とcunaは面倒くさそうな顔をしました。
「あ、もう一個なぞなぞ思いついた。」とhunaはいいます。
「ひうな むり する な」とunaがなだめました。
またもやcunaの顔がパッと輝きました。
「あたらしいなぞなぞ教えて!教えて!」とせがみます。
「今度こそ、ちゃんとついてきたら教えます。」ときっぱりといいました。
「ついていくから、教えて、教えて」
というと木々がどんどんと広がり森が開けていきます。
「どうしようかなぁ、あ、また思いついちゃった。」
とhunaはいいながら、早足で歩きます。
cunaは「なぞなぞだして!なぞなぞ!」と泣きそうな顔をしました。
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ようやく馬車に乗ったcunaですが、乗ってからというもの文句ばかりです。
まずはhunaがなかなか「なぞなぞ」を出さない事を怒っていたのですが
いまは空腹のことで文句をいっています。
cunaはと対面の席に座っているhunaに「なんかくわせろ」といいました。
「そういう言葉づかいの子にあげるものはありません」とhunaはいいます。
cunaは「ばーか、ばーか」といいました。
「食べ物あげないからね!」とhunaはいいます。
するとcunaはふくれっつらになりました。
ちいさい声で「ばぁか」といいました。
そんなやり取りのなかも香水師はひどく深刻な顔をしていました。
「おなかいたいか?」とunaは聞きました。
すると香水師は「おかしい。修道服の老人の匂いがしない。」といいました。
「どういうこと?」とhunaは聞きました。
香水師は首を振りながら、わからん、といいました。
「いままでならば、断片的にとはいえ、痕跡があった。
しかしいまは全く消えてしまっている。」
「そんな」とhunaは思わず弱音を吐いてしまいました。
車内に動揺が走ってしまいました。あわてて
「それであれば、目撃情報を集めましょう。近くに生き物はいますか?」
と言い直します。
「このまま進めば、小さな村がある。」と香水師は落ち込んだまま答えました。
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unaたち一行が村にはいると、家の豪華さに驚きました。
家の数はわずかしかないのですが、
どの家も凝った装飾と高価な素材でできています。
hunaは馬車から降りて、ひときわ豪華な家の前に立ちました。
敷地をすべてピンクの大理石が敷き詰められており、
家を囲う柵は金箔が貼られています。
hunaがやけにキラキラとしている呼び鈴を押そうとしたとき、金箔の柵が開きました。
そして口が少し半開きの日焼けした背の低い男があくびをしながら、でてきました。
似合わない金色の服をきています。
「すみません、人を探しているのですが」とhunaは声をかけました。
「人?」と背の低い男は、頭をかきながら面倒くさそうに答えます。
「黒い修道服をきて、顔に黒いベールをした老人です。ご存知ありませんか?」とhunaは聞きました。
「さぁしらんなぁ。」とまるで関心がありません。
「わかりました、ありがとうございます。」とhunaが立ち去ろうとすると、
村人は奇妙なことをいいました。
「本当にさがしてるなら、音(おと)の神様にきいたらいい。」
「音(おと)の神様ですか?」とhunaは聞きました。はじめて聞く名前です。
「ほれ、あの山。あの山の上に住んでいるんだ。」と黒っぽい山を指差しました。
「神様は動物やら草やらの言葉がわかるんだ。
みんなお告げをもらおうと順番を待ちながら神様の世話をしているんだ。」
「神様に実際にあったことはあるのですか?」とhunaは聞きました。
すると村人は大きくうなづいて、
「この村は作物が採れなくて貧しい村だった。
それを村長の息子が子供のころから並んで、
成人になるころお告げをもらって、ほれ!」
と大きな屋敷や金色の服を指差します。
「わかりました、いってみます。ありがとうございます。」とhunaは頭を下げました。
村人は「辛抱したって、聞く価値があるぞ」といいました。
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