sunaは古くからの強い力、
hunaたちは新しくでてきた強い力の場所にいくことになりました。
馬車の上で、sunaからもらった地図を見ながら「神秘的で素敵なひとだった。」
とhunaはいいました。
それを聞いて「おおばかだ!」とcunaはいいます。
「何度いえばわかるの?そういう言葉を使っちゃいけないのよ。」と
地図を置いて怒りました。
そのやり取りをみながらunaと香水師は目で合図をしました。
なかなかはなしがわかるやつだ、とunaは思いました。
このあたりは、空気が冷たくとても澄んでいました。
まるで氷の国を思い出させます。
雪男がなんだかとても元気にみえます。
ふぅ、と吐く息が白くなりました。
もしかすると、雪になるかもしれない、とhunaは思いました。
馬車のなかの小さなストーブに火をともしました。
hunaはぼんぼりのついた白い帽子をかぶりました。
unaは茶色のコート、cunaは派手な色のコートを貸してもらいました。
(明日の朝には強い力の場所についているだろう)とhunaは考えました。
馬車は冷たい夜の中を走り続けました。
朝方、馬車の止まる音でhunaは目が覚めました。
unaもcunaもまだ眠っています。
車内のカーテンを少しずらし、窓の外をみてみると
いつの間にか銀世界になっています。
ストーブの火は消えていましたが、車内はぽかぽかとしています。
あたたかな場所からみる雪景色は格別だ。
あたたかで、とてもきれいで、いいとこ取りです。
unaたちを起こさないように、そっと外に抜け出しました。
朝の空気は、ぴりりとしていて、hunaは思いっきり息を吸い込みました。
白い雪がやさしく降りてきています。
地面が少しやわらかいことに気づきました。
ふと、後ろを振り返ってみると、馬車がありません。
(まさか)と心に不安がよぎります。
もう恐ろしい場所に踏み入れてしまったのか、
と思うと胸が痛くなりました。
さっきまで雪景色だった風景が、いまは砂漠のような場所になっているのです。
(落ち着いて考えよう)とhunaは思いました。
これは、森のなかと同じ現象、つまりは幻なのです。
前と同じように、きっと抜け出せるはずです。
しかし、今回は体が鉛のように重たく感じられました。
さらにまぶたがとても重たく、まばたきすら、できないのです。
あたりには自分の呼吸音だけが響き渡りました。
次の瞬間、信じられないことが起こりました。
自分のまつげがスルスルと伸びていくのです。
hunaはその様子を冷静に受け止めようとしました。
(これは幻だ)と心で何度もつぶやきました。
水平線をスルスルと伸び行くまつげは、遠くの断崖をはい、森をつきぬけ、
はるかかなたの小さな駅の線路に接続されたようでした。
(相当な悪趣味だ)とhunaは考えます。
まつげの上をとてもちいさな列車がはしってくるのが、はっきりみえました。
そのうちのひとつに、とてもちいさくて恐ろしい男がのっていました。
それは、かつてのこの星の支配者、通称支配人と呼ばれる男でした。
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まつげの上を列車の振動が伝わってきました。
hunaは、まったく動けずに近づいてくる列車を待ちました。
まばたきができなくて、ぽたぽた落ちる涙が水かさを増していきます。
それがどんどんと溜まっていき、
ちょうど目の高さまでの透明な海をつくりました。
列車は海の上を水しぶきをあげ、すごいスピードで走ってきました。
どこからともなく響き渡るホイッスルの音とともに、水しぶきをあげて
目の直前で止まりました。
とてもちいさな男は怒った顔をしてこういいました。
「とうちゃぁく!」
男はポケットから大きなハサミを取り出し、hunaのまつげを切りました。
涙の海は一気にひけ、支配人は列車ごと、まつげから転げ落ちました。
そして地面に横たわりながらも、「さてさて、どうしてくれよう?」とにやりとしました。
hunaの体は相変わらず、重たく自由がききません。
「退屈しのぎにはなるかな。」と大きな音がしました。
目の前に、巨大な岩の顔面がそびえたっています。
まるで地面から巨人が頭だけをだしたようです。
hunaは呼吸をゆっくりと整えました。
そして「あなたが支配人ね?」と聞きました。
「私はロケットを探しています。ロケットの場所を知っていますか?」
「ふむふむ、わが名は消えていなかったか。」
巨大な顔面は地響きを起こしながらいいました。
顔面は無表情になり、本当に岩に彫った彫刻のようになってしまいました。
「ほうほう、お前はあの氷の国の女王か」と後ろから声がしました。
いつの間にか、シルクハット姿に戻っているのです。
「はあはあ、これは面白いことになった。」と支配人は笑いました。
「前回もお前の国だけが抵抗しつづけたからな。」
そういうと、hunaの足元に円形の亀裂がはいりました。
そしてその地盤が一気に持ち上がりました。
hunaをのせた岩はシュルシュルと伸びてゆきます。
「あぁ」と悲鳴をあげてhunaは気圧の変化に痛む耳を押さえてかがみこみました。
地盤はそれも構わずに、雲の上まで伸びていきました。
支配人は退屈そうにそれを眺めました。
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「ひうな が いない」とunaは馬車のなかで声を上げました。
香水師が目をこすりながら、鼻をひくりとさせ、首をひねりました。
「おかしいな。ここらにはいない。」
外に出てみると、cunaと雪男はゆきだるま作りをしていました。
「きゅーな ひうな しらんか」とunaは聞きました。
「あんな意地悪知らない」とcunaは答えました。
香水師は、さまざまな角度で匂いを探しますが、やはりどこにも見つかりません。
uma(馬)も困惑しきっています。
「あいつ、なぞなぞ思いつかないから逃げた!」といいながら
cunaがふわふわと浮かび上がりました。
ぶつぶつと文句をいいながら、ゆっくりゆっくりと空にあがっていきます。
hunaは寒さにガタガタ震えながらも、できるだけ冷静に努めました。
ゆっくり下を覗き込みました。
なんという高さでしょう。
はるか下に雲があり、そのさらに下に小さく地表がみえます。
足元の岩も見ましたが、足場になりそうなところは、はるか下です。
それよりも問題は、強い冷たい風と寒さです。
過酷な環境が体温をどんどん奪っていきます。
いくらコートを着ているとはいえ、ここに長くはいられません。
(飛び降りようか)とhunaは思いました。
以前も体験したように、これはすべて幻覚のはずです。
(もしもこれが幻覚じゃなかったら)という考えも頭をよぎりました。
hunaは目をつぶり呼吸を整えました。
(もしかすると、現実はさほど高い場所ではないかもしれない)と考えました。
小石を落としてみて音と高さが一致しているかを試してみる価値はあります。
hunaは足元の小石を拾い落とそうとすると、
下からcunaがふわふわ飛んでくるのが見えました。
(幻覚だ)とhunaは思い、cunaにむかい石を落としました。
ごちん、という音を立てて小石がcunaの頭に当たりました。
(あそこで跳ねた、もしかすると本当の地上はあのあたりにあるのか)
とhunaは考えました。
「痛い、痛い」と半べそをかきながら、cunaの幻があがってきました。
頭をおさえながらhunaの目の前にたちました。
「あなたは幻よ。」とhunaは震えながらもいいました。
cunaは痛い痛いと泣きながら、hunaのことをたたきました。
どうも様子が違います。
「本物なの?」とhunaが聞くと「バカか!」とcunaが怒りました。
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「ばかばかばかばか」とcunaはずーっと怒りながら、
hunaを背中にのせて降りていきます。
「ごめん。」とhunaも何度も謝りますが、cunaの怒りは収まりません。
「なんであんなとこに逃げた?」とcunaは腹を立てていいます。
「逃げたんじゃないの。支配人にやられたのよ。」
「嘘つき!」とcunaはいいました。
「ひうな!」と地上の馬車からunaが叫びました。
cunaの背中から降りたhunaは馬車に駆け寄ります。
「ひうな も とんでったのか?」とunaが驚いていいます。
「違うのよ、支配人にあったの。」とhunaがいいました。
「石までぶつけた!」とcunaはまだ怒っています。
「支配人なんて、大昔の伝説だろう。」と香水師はいいました。
「とにかく、ここの場所は危険だわ、早く抜けてしまいましょう。」とhunaはいうなり
馬車を走らせました。
馬車は雪を飛ばしながら、全速力で走ります。
cunaは不機嫌なまま、馬車の奥でフテ寝をしています。
珍しいことに、unaまでふくれっつらをしています。
「どうしたの?」とhunaが聞くと、unaはひどく警戒した様子で首を振りました。
「おやおや、ロケットのことが知りたいんじゃなかったのかな。」と香水師がいいました。
「話が通用するような相手じゃないわ」とhunaは答えました。
(おやおや?)とhunaは引っかかりを覚えました。
香水師はこんな話し方はしません。
「はてはて、話が通じないとは失礼だな。」と香水師は笑います。
横のunaをみると、ずっと香水師をにらんでいます。
「あなた何者?」とhunaはいいました。
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