かつての星へ

“パイロットスーツのhuna”は、箱舟の操縦席に座りました。
その横にはhunaが見つめています。
お互いになにもいわなくても、意識が通じ合っているようで
ふたりの間にはまるで言葉がいらないようにも見えます。

“パイロットスーツのhuna”は、箱舟の操作盤を少しも迷うことなく操作しました。
箱舟はあっという間に宇宙に飛び出しました。

たくさんのunaたちは大きな箱舟のなかを探索して歩いています。

hunaが、一緒にきたunaを呼ぶと、たくさんのunaが返事をしました。

一緒にきたunaは服装が違うのでわかるのですが、
これからの事を考えてhunaはこういいました。
「これだけたくさんいるからunaのことはウナって呼ぶわね」
ウナはにんまりとしました。

ウナはロケットの上から、ふしぎな星をみました。
海はキラキラと光を反射しています。
ウナは目を開け海岸の遠くをながめました。
そこはひと気のない工業地帯のようにみえました。
どこまでも海岸は続いてその風景は飛び続けてもほとんど変わりませんでした。

「おおーい!」とウナは、窓に顔をはりつけていいました。
星の水没はさほど進んでいないように思えました。

ウナは鼻をヒクヒクとさせ、仲間の匂いをかごうとしました。
ウナの胸の奥には張り裂けんばかりの高揚感がありました。

「あそこにいるー!」とウナはいいました。

hunaの目にも、そのちいさな影がみえました。
水浸しになった土地のうえで、たくさんのunaたちが、嬉しそうに手をふっていました。
まるでこの世界すべてが祝福をしてくれているように感じました。
hunaはunaと“パイロットスーツのhuna”をみて、微笑みました。
unaはこの瞬間が永遠に続いていくような気がしました。

ついに仲間たちをむかえにくることができたのです。

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箱舟の中は、たくさんのunaたちでにぎわいました。
「せいれーつ!」と旅をしてきたウナがいいます。
大勢のunaたちは、にやにやしながらも、ちゃんと言うことを聞いて並びました。
cunaは、たくさんのunaたちにナゾナゾをだして喜んでいます。
“パイロットスーツのhuna”は、流れるような指さばきで操作盤をたたき、
箱舟の進路を氷の国へとセットしました。
元女王のhunaは、目をつぶり氷の国の事を考えています。

香水師は着陸した際に
なにやら珍しい白い花をたくさん集めてきたようでそれを調合しています。

「あと10分で星に到着、そのまま海に潜り、氷の国の海へと着陸です。」
“パイロットスーツのhuna”がいいました。

箱舟がふしぎな国の海に着水し、ずとーんと大きな水柱をあげました。
海にはいるなり、箱舟の中にモニターに氷の国の様子が映りました。

街のいたるところから、黒い煙が立ち込めています。
それを見ているhunaのそばに、uma(馬)が擦り寄ってきました。
「これで国中を走りまわれ。」
と香水師はhunaに、unaの星でとってきた白い花びらの袋を渡しました。
「心が穏やかになる香りだ。」

hunaは、uma(馬)にまたがりすごいスピードで国中を駆け抜けました。
氷の公園で争っていた人々の間を抜け、襲撃されたスーパーの前を走り抜けました。
驚いた人々は、香りに心を和らげられ、そして馬上の女王を見ました。

そして国中で「女王が戻った。」という歓喜の声が響きました。
空からは、白い雪がたくさんふりそそぎ黒い煙を消してしまいました。

hunaがお城へと走りこんだ頃には、国中の人々がお城へと詰め掛けています。

人々はある期待に胸をふくらませています。子供たちも嬉しそうに走り回っています。
女王の復活を見るために、集まっているのです。

hunaが氷のお城の中に走り抜けていくと、
すべての神官、大臣、侍女たちが最敬礼をしていました。
おしゃべりな侍女が涙を流して「女王様お帰りなさい。」といいました。
そこにはパイロットスーツのhuna、cuna、suna、香水師、雪男もいました。

uma(馬)から降りて見渡せば
神官たちも大臣たちも、とても晴れ晴れとした顔をしています。

「さぁ、女王様、国民がまっております。」と老神官がいいました。
hunaはお城の城壁へと向かいました。

そこには、ウナが待っていました。
「すごいひとだかり だ」とウナがうれしそうにいいます。

hunaが城壁の上から姿をみせると、国民は大喝采をあげました。

「わたしがいない間、ご苦労をかけました。」
とhunaがいうと、大歓声と人々の泣き崩れる声が聞こえました。

hunaは続けます。

「わたしたちはとてもふしぎなたびをしました。ときには苦しいことも、
困ったこともありました。
わたしも何度もくじけそうになりました。ひとりの存在は弱いものです。
仲間の存在は本当に強いものでした。」

国民はhunaの一言一言を聞き逃すまいと、息をのんでいます。

「この旅を通して、わたしは重要なことを学びました。」

「隣のひとはなんのためにいるのでしょう。」
「わたしは隣人をたすけるために、隣人はわたしをたすけくれるために、
いてくれるのです。」
hunaはウナのことをじっとみつめました。
ボロボロと涙が流れました。
感極まって言葉がでてこないのです。

hunaがしゃべらないので、国中の視線はunaに集まっています。

そこでウナはこういいました。

「うな みんな すき だ。」

ウナはみんなのことがすきなので、みんなもウナのことがすきなのです。
hunaもcunaもsunaも、香水師も雪男も国民も神官も大臣も、喜んで拍手をしました。

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そして

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氷のお城はでは、連日のお祝いパーティが開かれました。
たくさんのunaたちと一緒で、(旅をしてきた)ウナは大喜びです。

cunaには、おやつ食べ放題となぞなぞの本でいっぱいの部屋が割り当てられました。
一度部屋に入るとなぞなぞの本に夢中になって出てきません。

香水師はお城の中に専用の香りの工房をもらいました。
そのせいか毎日うっとりするような匂いが漂っています。
ウナは特別に「いちごパンの香水」をつくってもらいました。

箱舟に眠っていた生き物はひとつひとつ解凍し、sunaが相談にのり、
それぞれの生まれた場所に戻ることになりました。
解凍された中には昔の名医がおり、ネムルさんの病気を簡単に治してしまいました。
すっかり病気の治ったネムルさん夫婦には、
お城の園芸を担当してもらうことになりました。
sunaはしばらくは、お城にいましたが、再会の約束を交わし、山に戻りました。

ウナも女王hunaもパイロットスーツのhunaもcunaもみんな笑っています。
夜になっても、眠ってしまうのが惜しいくらいです。
ウナと女王hunaとパイロットスーツのhunaはずっと一緒にいて、
すこしの時間も惜しむようにいろんなお話をしました。

女王hunaは、みんなと話をしながら胸を騒がせる高揚感とせつなさを感じていました。
すばらしい朝です。
なにかが終わり、そしてなにかがはじまる。
外はもう明るくなってきている。
なにかが変わろうとしている。
はっきりとはしない。
生きることはすばらしい、改めて思いました。
多少苦い思いだってあるけどでもやっぱりすばらしいと思ったのです。

お城の窓からは少しずつ明るくなってくる空がみえました。

世界にはこんなに美しいものがあるのに、いつも忘れてしまう。
忘れたくないのに。
この不思議な気持ちをあの小さな箱にでもにとって置きたい、
と女王hunaは思いました。

いつかじぶんは高慢で思い込みの激しい女王になってしまうかもしれない。
そんなときに、この気持ちをみることができたら
きっとやさしい気持ちを取り戻せると思う。
本当にこんな気持ちがずっと続けばいいのに。
そうだったらいいのに、と女王hunaは思いました。

そんなことを考えているとウナが声をかけました。
「ひうな」
女王hunaとパイロットスーツのhunaは同時に振り向きました。

「これからもいっしょか?」とウナは聞きました。
ずいぶんとしゃべり方も自然になってきています。

「もちろん」とパイロットスーツのhunaだけが答えました。

同時にもちろん、と答えようとした女王hunaは声がでませんでした。

ここに来て、あの恐ろしい契約が成就するときがきたのです。

女王hunaはがくんとひざを落とし、そのまま後ろに倒れこみました。
頭につけていた冠がじゅうたんに転がりました。
ウナは驚いて女王hunaを起こそうとしました。

「ひうな、ひうな」とウナは必死に呼びかけます。
しかし女王hunaの体はどんどん冷たくなっていくのです。
声もきこえていないようです。

「お医者さんを呼んでくる!」とパイロットスーツのhunaは
寝室を飛び出していきました。

女王hunaを介抱しながら「ひうな」とウナはいいました。
「うな、じもかけるぞ。」
すると女王hunaはかすかにうなずきました。
しかしそれが最後でした。

ウナが「りょうりもできるようになった」といっても
ウナが「あいさつもできるぞ。」といっても、もう答えてはくれなかったのです。

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あまり突然訪れた女王hunaの死に、神官たちは混乱しました。
国民は再建にむけて、みんな張り切っています。
ここで女王hunaが死んだとなれば、どうなることか予測がつきません。
寝室での緊急会議の末に神官たちは、
パイロットスーツのhunaに女王の代役を頼みました。

パイロットスーツのhunaはショック状態になってしまい
、感情のない人形のようになっています。
ウナは女王hunaの手をつかんだまま、離そうとしません。

パイロットスーツのhunaは侍女に連れられて、奥の部屋にはいりました。
やがて女王のドレスをきてでてきたパイロットスーツのhunaは、
どうみても女王hunaにみえます。

侍女に手を引かれ、パイロットスーツのhunaは神官に冠をかぶせてもらいました。

その瞬間、パイロットスーツのhunaの表情が変わりました。
まるで別人になってしまったようにも思えます。
パイロットスーツのhunaは、どんどん涙を流しました。
その涙はいつまでも止まりません。
unaもその涙をみて、女王hunaの手を離しました。

しばらくして、深い息を吐きながらパイロットスーツのhunaはいいました。
「あなたにお願いがあるの。」その口調は女王hunaそのものです。

「理由は説明できないけど、どうしてもそこにいってほしいの。」
ウナは泣きながらも、うなずきました。

神官たちは、鳥肌がたちました。もしかすると、
死んだのは偽者のほうだったのではないかさえ、思いました。

女王hunaが氷の棺にいれられ、箱舟の氷の柱のなかへと運ばれました。
氷のお城で一部の神官と侍女に囲まれてm葬儀がひっそりと行われているころ、
ウナはずいぶんと長い旅に出ていました。
パイロットスーツのhunaが教えてくれた、地図にものっていない場所です。